その年もいつも通りの年末年始を迎えたが、何とか雪の中を走れないものだろうか?という思いが徐々に強くなっていた。
そして2月、遂に我慢できなくなった私は雪の中を走る決意をした。
外には数メートルの雪が積もっているので、
「長靴で走ろうかな?」
「いや、やっぱりいつもの靴で走ろう!」
と、かなり危険な臭いを感じつつも完全装備の格好で外へと飛び出した。家の近くはある程度除雪されているので、人が歩ける状態にはなっている。
しかし、民家が少ない所まで出ると一気にトンネルを抜けたような雪深さとなる。
「ザック、ザック」「ギュッ、ギュッ」
当然ながら周りには誰もいないので自分の足が雪の中を走る音だけが響く。いや、雪の中を走るというより「雪の中を漕いで走る」と言った方がよいか。
案の定、数分も歩くと冷たさで足の感覚が無くなってきた。しかし、もうすでに家から1.5キロは離れただろうか。こうなればいつもの5キロコースを完走するしかない。
途中、何度も泣きそうになったが何とか家までたどり着いた。
しかし、家に着いても直ぐには足を暖めなかった。なぜなら、私は高校生の頃バス停まで走って耳が凍傷になったことがあるからだ。
凍傷というのは寒すぎて冷たすぎて火傷をするようなもの。当時の私の耳は倍以上に腫れ上がり格好悪くて2週間も学校を休んだ記憶がある。
そんな実体験があったので、凍傷気味の足は時間をかけて徐々に温めその日はおとなしく寝た。
翌日はさほど大きな痛みも無く、何とかやり過ごせたので私は2日後も走った。
しかし、それは大きな間違いだった。
更にひどい状態になったため2月はもう走ることは無かった。
甘かった…
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