トライアスロンへの道 その9

 

その年のオロロントライアスロンに出るといったものの、大会までは3ヶ月を切っていた。

25mもまともに泳げない、息継ぎも出来ない男がたった2ヶ月ちょっとで2000mを泳げるようになるのか?それもプールではなく、日本海を泳がなくてはならないのだ。いずれにしても、その距離を泳げるようにならないと、大会に出ても早朝の時点で終了してしまう。とにかくスイミングスクールに行くしかない。

という訳で職場の近くにあるスイミングスクールをチョイスして、最初のスクールに挑んだ。

 

ロングトライアスロンを完走するためには「ある程度泳げる」ことが必須条件となるが、しかし、大会まで3ヶ月を切っているのに「全く泳げない」私は、スイミングスクールで基礎から習うしかない。しかし、実質2ヶ月ちょっとでどこまで出来るのか?

そんな半信半疑のままスクール初日を迎えた。

 

まずは当然初心者コースに入ったのだが、その時同じ初心者コースにいたのは私を含めて3人。となりの中級コースには10人、そのまた向こうの上級コースには20人くらいのスクール生がいた。

初心者コースの他の2人が女性だったこともあり、私は若干肩身が狭い気がしたが、とにかく基本から学んだ。

 

バタ足・潜水・スカーリング・水中歩行

 

いずれも覚えておかなければならないことなのだろうが、私が「全く泳げない」と言ったから気を使ったのか。正直言ってとても退屈な時間だったし、他の二人にも申し訳ない気持ちだった。と思いつつも、こんな状態でトライアスロン大会に間に合うのか?と、心の中で小さく呟きながら地道な練習を続けた。

 

私のスイミングスクール初日は、2時間続けて習った。

最初の時間はほとんど泳がず終わったが、2時間目はビート板を使ってひたすらバタ足の練習だった。バタ足は水泳の基本でクロールや背泳ぎの時に使う重要なアイテムなので、上手く出来るようになるまでしつこいくらい練習した。

 

結局、スイミングスクールの初日はほとんど泳がずに終了したが、私には時間がなかった。

2ヶ月後には、2000mを泳げるようになっていなければならないのに、ひたすらバタ足ばかり。全く泳げない男が、実は2ヶ月後のトライアスロン大会で2000m泳げるようにならなければならないんです、なんてとても言えなかった。

 

そんなスクールの練習も徐々に進み、クロールの手の動きを教わるようになった。でも当時の私には、その動きは全く理解出来なかった。

手で水をつかむ「スカーリング」という動作は、初心者にとって「水なんかつかめる訳がないだろう!」とツッコミたくなる技だ。まぁ実際の話スカーリングは今でもイマイチ出来てないので、その頃は本当に大変だった。

 

 

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