トライアスロンへの道 その21

 

スイムの制限時間には間に合ったものの、更なるアクシデントが発生した。

バイクのチェーンはちゃんと掛かっていたし、バイク自体は押せば動くのにペダルは回らない。もう何が何だか解らないままスタート出来ないかも、と思い私は泣きそうになっていた。

 

そんな投げやりな状態で「もう、こんなバイク!」と思い投げつけようとした時、リアのホイールからガチャガチャという音が聞こえた。もしかして、リアのホイールがちゃんとはまっていなかったのかも、と思いよく見るとなんとリアのホイールが少しずれたままになっていた。

大会前日にバイクを預ける際の検査はちゃんと通過していたので「なんで今さら」とは思ったが、車で移動する時はリアのホイールを外すこともあったのでその時は納得した。

まずはリアのホイールをいったん外してちゃんと付け直してロックし、改めてちゃんと動くことを確認してから今度は落ち着いてバイクのスタートを切った。スイム後の着替えで手間取り、バイクのスタートでトラブルが発生した。

 

しかし「これから挽回してやる」という気持ちが更に強くなり増毛の港を後にした。

なんだかんだ言ってスイム後のトランジッションでは15分以上掛かっていたと思うが、そもそもウエットスーツを脱いでバイクパートに入る練習はしたことがなかった。

そう考えると、このロングレースで初めてそんな緊迫した練習が出来たのは貴重な体験と言えるだろう、と思うことにした。そんな気持ちでいられるのも、大会直前くらいからバイクに対して少しずつ自信を持ち始めていたからかもしれない。

 

実際、大会の1ヶ月前くらいからは毎週のように150キロ以上を練習して最長で183キロを走ったこともあったから、サポートのある大会で200キロを走るのは不安ではあったが楽しみであるという気持ちも少なからずあった。

大会中であるにもかかわらず、私は日本海を横目にまるでサイクリングにでも来たような気持ちでバイクを走らせていた。

 

そんな気持ちで「これから200キロ走るんだぁ」と思うと長い道のりをどう過ごすか、そう思いながら走り出すとちょっとだけ左足がカシャカシャするのが少し気になり始めた。

今まで練習で何百キロも走っている時に気にならなかったことが、これから200キロも走るかと思うと小さなことが気になるようになっていた。こうなるとそのままにしておけないのが私の悪いところ。

レース中で後ろから数えられるような位置にいるのに、私はバイクから降りて左のバイクシューズをはめるペダルの調整を始めてしまったのだ。

 

左のペダルは確かに以前からちょっと緩いかなぁとは思っていた。

ただ、初心者の私が自分でそんな調整するなんて考えもしなかったのでそのままにしていた。ちなみにロードレース用のバイクは、ペダルとシューズがカチャッとはまるような形に設計されているので、少しの遊びがあるのが普通だ。

しかし私は、緩いよりはキツイ方が良いだろうという単純な発想で締め付けてしまい、その後のレースを左足に力の比重が偏ったまま残りの190キロ以上を走ることになった。

 

それがこのレースで完走できるかどうかを左右するだけではなく、その後数年の私のマラソン人生を左右することになることも知らずに…

 

 

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