トライアスロンへの道 その24

 

バイクは初山別村を越え、レース半分の100kmに達していた。

涼しい天候は相変わらずだが、私は段々退屈になりつつあった。それだけ、気持ちに余裕があったとも言えるのかもしれないが、疲労感を感じないまま体が疲弊していたのかもしれないし、本当に無心でペダルを回していたのかもしれない。

 

しかし、そんな退屈な時間は長くは続くはずはなく、徐々に苦しいものに変わりつつあった。この辺りから日本海の海風が猛烈に我々の体に吹き付けていたので、バイクの体勢を維持するのが少し難しくなっていた。

そんなに海岸沿いのすぐ側を走っていたわけではないが、何となく海の潮が顔に当たっているような感覚になり、風と潮で顔が痛さを感じていた。真冬の吹雪に顔をさらしているような感覚に近いものがあった。

その海風は遠別町から天塩町に向かうと更に厳しい風になっていた。横風なのか向かい風なのかよく分からないまま、とにかく少しでもペダルを回し続けないと前には進まない。こんなところで手を抜くわけには行かない、という思いから私は気合いを入れ直して前に進んでいた。

 

天塩町にバイク最初の関門があったようだが、海風にやられていた私はそんな看板らしきものを確認することは出来なかった。いや、関門がどこにあるのかさえも実は知らないままレースに参加していた。

今考えると恐ろしいことだが、初めてのロングトライアスロンなのに途中の関門を覚えていなかった。そんな状況のまま、このコースの折返し地点となる幌延町役場に向かって、何も考えられないままペダルを回していた。

 

ようやく日本海の潮風から逃れることが出来て、少しの間内陸に入る。

幌延町の役場がコース最北の場所で折り返しともなるので、レース後半に向けてどれだけスタミナが残っているかを確認するポイントになる。後で知ったことだがこの幌延町役場前159.6km地点が2番目の関門だったらしい。

 

役場前のエイドには、思っていたより沢山の応援の方が見えていた。その前を格好つけてボトル交換しようと思ったのだが、予想以上に体が冷えていて手が震えてボトルを落としそうになり危ないと思って一度バイクから降りてボトルをセッティングし直した。

この幌延町では踏み切りを渡る箇所があり、足を着いて停止するのを審判員が確認しているので少し緊張した。

 

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