しばらくぶりにコースが折れ曲がり、私は何かを感じた。
恐る恐るコースの誘導員の人に「ゴールまでどのくらいですか?」と聞くと、「ここを曲がってあとは真っ直ぐ走るとゴールだよ」と言ってくれた。やったぁ!ようやくこの長いレースから開放される。ただ、そんな思いしか出てこなかった。
ゴールゲートと思われる場所はまだ見えない。ただ、なんとなくずっと先の方が騒がしい感じがするのは間違いない。
そして、よく見ると私の遥か前方にはランの前半を併走したF先生らしき姿が見えた。かなり離されたと思ったけど、意外と近かったんだぁ。私は自分がここまでしっかり頑張って走ってきたんだ、ということをその時やっと認識できた。
目の前には数人のランナーが走っているが、なかなか追いつけない。何とか走ってはいるが、ほとんど体に力は入らない。何だか、胸の中から込み上げるものがググっとキタ感じがした。
もちろん、それは気持ち悪いものではなく、その逆だ。
あぁ、俺はあんなに朝早くからこんな真っ暗になるまでずっと動き続けてきたのか。水泳ではビリになりそうになり、自転車ではホイールが外れていてしばらくスタート出来なかったり、マラソンに入ると膝裏が痛くてずっと我慢してきた。
自分を褒めるとかそんなレベルの出来事ではない。今までこんなに苦しいことをやってきたのは初めてだ。よく途中で投げ出さなかったものだと驚くばかり。そんなことを思っていると、ゴールラインが迫っていた。
制限時間を6分ほど前にして、私は初めての本格的なトライアスロンをゴールした。
それも14時間近くかけて日本海沿いを南から北へそしてまた南に向かい、長い海岸沿いをずっと走り続けてきた。スイム2.0km、バイク200.9km、ラン41.8kmの計244.7kmという長い戦いが終わった。
ゴール後は、今まで数ヶ月間一緒に練習してきた先輩たちが「よくやった」と頭を撫でて褒めてくれた。私は苦しさと寒さと痛みで泣きそうになっていたが、やっと、やっと長い一日が終わってホッとした。
完
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