第3回大雪山ウルトラトレイル レポート

大会レポート
開催日時 2015年7月26日(日) AM4:00(80km)
開催地 遠軽町白滝(スタート・ゴール同じ)
種目(制限時間) トレイルラン 80km(15時間)・40km(10時間)・25km(6時間)
参加者(出走・完走) 80km(192名・135名)・40km(156名・149名)・25km(113名・105名)

昨年散々迷った後に初のロングトレイルとなる72kmコースにエントリーし、暑さにやられながらも何とか完走したこの大会。今年は距離が+8km標高差が+400mほど増えて、距離80km・累積標高差3400mの制限時間は15時間となった。

しかも昨年まであった110kmの2ステージ制がなくなったことで、昨年110kmコースに参加していた選手も80kmコースに加わったため、約200名ほどのランナーが80kmに挑むことになる。

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大会前日は会場入りして受付しようとすると「80kmは装備品チェック後に受付」となっていた!昨年はそこまでしてなかったけど今年は制限時間が長くなったからか、万が一に備えて色々チェックされた。

しかもその後に参加した説明会は熱気ムンムン、というか湿度がハンパなく座って聞いているだけで汗が滝のように流れてくる。これは明日が思いやられるなぁ、と少し怖くなった記憶が残った。

昨年より標高差が増えたとはいえ、基本的なコースの流れは変わらない。今年の作戦としては前半を100kmマラソンのつもりで走り、中盤のダラダラ登る林道を体力温存しながら我慢して、後半は普通に登山をするつもりで行くことにした。

昨年より練習量が少ないのは明らかなので、気負わずゆったり呼吸を落ち着かせ山の下りを楽しめたらいいなと思い、予想タイムは13時間半~14時間くらいと考えた。あわよくば、昨年の13時間9分を切れたらラッキーという気持ちも少しだけあった。

前日の説明会の時もそうだったが当日も湿度が異常なまでに高く、北海道とは思えないような湿度の中、朝4時に我々は白滝のキャンプ場をスタートした。

まずは奥白滝の高速出入口を通過してからは天狗平の林道に入り、上り下りを繰り返しながら農場地域をクネクネ曲がりながら距離を稼ぐ。暑さというよりは息苦しさを感じるほどの湿度で、帽子から滴り落ちる汗を見ながら水分補給の量を調整した。

以前小学校があった跡地で最初の熊の糞を見付けたが、その後は数え切れないほど見ることになる。明らかに民家の敷地内と思われる場所や、一部国道の歩道を走ったりして最初のエイドにたどり着く。

A1エイド(18km地点) 2時間0分

ここまで細かい上り下りはあるが、サロマ同様6分半くらいのペースで走り昨年と同じタイムで通過した。ここまでの距離も昨年より若干長いようだが、まだまだ先は長いのであまり細かいことを気にせず、ここでまず呼吸を落ち着かせて水分を摂りトイレに入る。

このあとは白滝の国道に沿って走る山側の林道で、更に細かい上り下りがありつつ徐々に標高を下げながら昨年はなかった白滝市街地のエイドへ向かう。

A2エイド(25km地点) 3時間0分

このあとは徐々に標高を上げながら、湧別川に繋がる小川に沿って走ることになる。小川のすぐ側の土手みたいな場所を走ったり、360度農場が続く普通の一般道路を走ったり、トレランレースというよりはハイキングみたいなコースだ。

しかし、湿度が高くて頭がボーっとしているのでスタート時に身に着けていたアームカバーを外し、時々帽子を脱いで少しでも風が直接当たるようにしたりもした。今日は長い一日になるのだから出来ることは何でも試しつつも、あまり細かいことは考えずにとにかく一歩一歩前に進むことだけを考えるようにした。

A3エイド(33.5km地点) 4時間9分

このエイドでハイドレの水を足してもらったが、ここまでは意外と500mlくらいしか減っていない。各エイドで水分を結構飲んでいたからかもしれないが、ちょっと水分をセーブし過ぎていたのかもしれない。昨年初めて出た時はエイドの数が少ない印象があったので、無意識のうちに水分を飲み過ぎないようにしていたのかもしれない。

今回は背中のハイドレーションに入れた普通の水を飲みながらも、胸ポケットの位置にセッティングしたジェルをチビチビ飲みながら走った。そして各エイドでは必ず何か固形物を食べて水分補給するというルーティンを守っていた。

この辺りの林道は昨年コースミスをして後続のランナーに呼び止められた場所だ。その間違ったコースも今年はしっかり確認して高低差300mほどの林道を上って下って一旦舗装道路に出る。

A4エイド(48km地点) 6時間2分
このエイドを過ぎるとオケイナイ林道に入るので、ようやくここでポールを使うことにした。昨年は天気が良くて直射日光にやられ、熱中症らしく心臓がバクバクしてかなりペースを落とした場所でもある。

しかし今年は今にも雨が降りそうな天候で、湿度が高いのを除けばとても走りやすい状況なのかもしれない。この辺では急な登りは歩き、下りでタイムを稼いだ。

A5エイド(54.5km地点) 7時間2分
この約55キロのエイドが今年の第一関門(8時間)になる。昨年より標高が低い場所に第一関門が設けられたのは、少しでも登山道に入る前にスタミナ切れしたランナーをシャットアウトするためだ。しかもここからは平山の分岐まで標高差1100mを一気に登ることになるので、厳しい選択を迫られる場所でもある。

ここのエイドでは念のためトイレ(大)を済ませて、気分も身軽になって登りに備えた。トイレを出たところで地元のボランティアの方と平山の話を少しして「あともう25kmですねぇ」と言われたが、ゴールまで14時間掛かると計算して「ここからまだ7時間掛かるんですよ」と言うと絶句していた(笑)

予想通りこのあとの登りは本当に長い。我々クラスのランナーがずっと走り続けることは不可能なので、とにかく速歩きくらいの気持ちでグイグイ攻めの歩きを続ける我慢の時間がしばらく続いた。

A6エイド(60.5km) 8時間7分
今年はこの平山登山口が予備関門とされており、8時間30分で通過しなくてはならないのだが私自身23分前にたどり着いた。明らかに制限関門が昨年より厳しくなっているのが分る。そんなことで恐らく昨年より完走率が落ちることも簡単に予想できる。実際のところ昨年85%だった完走率が、今年は70%になっていた。

制限時間にはまだ7時間近くあるのだが、これからの山岳区域のことを考えるとすでにリタイア宣言している人が数人座り込んでいた。いずれも昨年完走している方で、有明山や天狗岳の苦しさを知っているだけに「今年は耐えられないだろう」という判断のようである。

私も昨年のラスト苦しさは覚えているので大変だろうとは思うが、昨年は登山道を歩くのがとても楽しくて嬉しかったので、ここまで来て登山道を歩かない選択肢はない。まずはしっかり栄養を摂って本格登山に備え、平山への登山道に入った。

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私は登山道に入ると昨年同様急にハイテンションになり、地下鉄の階段を登るように登山道をグイグイ登った。途中の雪渓は昨年より融けていて、雪の上を歩くような場面はなかったのでちょっと拍子抜けしたが、そんなこともあり気が付くと私は事務的に山を登っていた。

第2関門(平山分岐) 9時間25分

恐らくこの間の登りだけで30人くらいは抜いたと思われ、平山の分岐点まで1時間10分でたどり着いた。ここを10時間30分で通過しなければならないので、この時点で関門時間に1時間以上の余裕が出来たことになる。

霧雨のような天気で多少風もあり、分岐点では数名のボランティアの方々がブルブル震えながら待っている中、私は半袖のまま歩行区間のチェックを受けた。

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ここから2キロ弱は走ることが禁止され、全ランナーに最低30分の歩行時間が与えられる。ハイマツなどが生い茂っており普通にゆっくり歩いても35分くらいのルートなので、ここは何も考えずに前の人について栄養を摂りながら33分ほどで歩いた。

歩行区間が終わる地点が比麻良山という山で、このあとは下りになるがなかなか走りにくい区間でもある。辺りは霧で視界は十数メートルくらいの中、徐々に走れそうなシングルトラックが現れたので少しずつスピードを上げて数人抜いた。

A7エイド(68km地点) 10時間38分

このエイドも予備関門(11時間30分)になっていたが、わりとあっという間に着いた感じがした。しかし、ここまでいいペースで走って来てそのリズムを崩したくなかったのでここは素通りすることにした。背中の水も食料もあり、休憩する人が沢山いたので長居する理由は無い。

その後間もなく、有明山への登りに入ってくる。ここはジリジリとした急な登りが続くのだが、たまたま私の前にいたランナーのペースが素晴らしく、着いていくのがやっとだった。かなりの息づかいのまま登っていると有明山までの登りでは15人くらい抜いたと思う。

やっと着いた有明山の山頂はゆっくり腰を下ろすスペースもなかったので、ここもあっさり素通りした。その後の下りはしっとり濡れた斜面だったが、左右の草などを着地点にしていい感じの走りは出来たと思う。

有明山の下りが落ち着くと今度は天狗岳への苦しい登りになる。ここは登山道と言えるような道ではなく、藪を強引に駆り払った感じの通路をグイグイ登ることになる。しかも雨が本降りになってきたので、足場は益々悪くなり厳しく急な登りに途中で立ち止まっているランナーが目立つ。

でも何故か元気な私は、そんなランナー達を尻目に普通に登山する要領でグイグイ登ることができた。しかも昨年は岩場の途中で腰を下ろして休憩したはずなのだが、今年はあっという間に山頂に着いた。

天狗岳の頂上では軽くシリアルバーを食べて、すぐにリスタートした。平山に入ってからハイテンションが続いていたので、このリズムを止めないためにも休憩はしたくなかった。

天狗岳を下ると鎖やはしごで慎重に降りる場面があり、この辺りから手は泥だらけになっていた。下りの傾斜もなかなかのもので、ほとんどのランナーが滑って転んでお尻が泥だらけになっていた。どうやって下りるのか分らずにボーっと天を仰いでいる人もかなりいた。

私は何故かそんなドロドロの下りでも、周りのランナーがビックリして避けてくれるほど狂ったようにハイペースで下っていった。横の方の僅かな草地に足を掛けてヒョイヒョイ下っていくのが楽しかった。超ハイテンションで下っている時の私は、きっとニヤニヤしていたに違いない(笑)

そんな泥下りも落ち着いてスキー場の鉄塔が見えると昨年の砂利を思い出した。昨年はスキー場のリフト側に砂利道がしばらく続き文句を言いながら下っていたが、今年の砂利はちょっと違っていた。砂利と土が少しずつ混ざった感じでいい感じに走りやすくなっていた。

そんな時、昨年一緒にゴールしたHさんが苦労していたようだったので、ちょっと声を掛けると様子がおかしい。ちょっと落ち着かせて勇気付け、その後はまた狂ったようにスキー場の下りを走った。

昨年ジグザグになっていた場所が真っ直ぐになっていたこともあり、私のテンションは最高潮に達していた。ロードバイクのケイデンスが130回転くらいの足さばきで(笑)ここでも10人くらいは抜いたと思う。

マラソンレースならラスト7~8キロくらいでゴールタイムの予想が出来るが、トレランレースはラスト3キロくらいでもゴールタイムの予想が出来ない。でも、このままなら昨年のタイムを更新できそうな予感がしたので、ラストのロードは4:45/kmくらいまでビルドアップしてゴールした。

ゴール(80km) 12時間56分

平山への登りや後半の下りでかなり時間短縮したようで、結果的に昨年72kmだったタイムを更新してしまった。前半はなかなか思うようなペースで走れず大丈夫かな?と思う場面もあった。

実際に平山の登山口までは100位以下で制限時間を気にするほどだったが、69位でゴール出来たのは結果的にスタミナを温存して山岳コースで爆発させることが出来たのかもしれない。

ラスト2時間くらいはずっと雨が降り続いていたが、そんなドロドロの足場を楽しむように走りゴールすることが出来た。特に平山の登山道に入ってから後半のタイムが昨年よりも1時間も短縮していたのは、それだけ成長した証なのだろうか。それとも昨年はちょっとしたトラブル(お腹関係)も若干あったりしたので、その分タイムロスしたのかな。

まだまだ細かなペース設定や荷物の軽量化などで、タイムを縮めることは可能だと思う。しかし、常に移り変わる景色を見ることで気分転換になり、苦しさを忘れさせてくれるトレイルランというスポーツが、もっと安全に沢山の人が楽しめるようになるといいなぁと思う。

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