「痔の手術から完全復活!」との思いを募らせ臨んだ、前年に続いて2回目の札幌マラソン。
ハーフマラソンとしてはたぶん北海道で最大だろう。
この時まで過去3回ハーフマラソンに出場して、いずれも満足のいく走りは出来なかった。というより、最後まで走りつづけてゴールラインを通過したハーフマラソンはなかった。
そう、必ず後半には歩いている自分がいた。これでは「完走」ではなく、『完歩』になってしまう。それまでの自己ベストは1時間52分01秒。
まずはこの記録を大幅に上回る記録が欲しかった。
何故なら、この頃自分の中に芽生えていた「フルマラソン」への想い。しかも北海道のフルマラソンといえば『北海道マラソン』に出たかった。言わずと知れた「トップアスリートが集う真夏の祭典」である。
しかしこの大会に出場するには実績が必要だった。それも「ハーフで1時間40分未満」という出場資格は当時の私にとっては果てしない目標だった。
1時間40分を切るには、1キロを4分44秒以内で走らなければならない。
しかし当時の自己ベスト1時間52分は1キロを5分18秒ペースで走っていることになるのである。1キロで30秒も違うペースはハーフでは異次元の走りだ。ただ、無理だと解っていてもチャレンジしなくてはならない。
その1時間40分を切ることを目標に私は札幌マラソンのスタートラインに立った。
ハーフマラソンとして北海道最大のこの大会はスタートラインにたどり着くまでが大変だ。
しかもスタートラインを過ぎた直後にはカメラマンが待っていて、ランナーの姿を撮り写真展や来年のパンフに載ろうという輩が目立つために両手を挙げる。これが妙にペースを乱す…と思いながら気が付くと私も恥ずかしそうに手を挙げる(笑)
そんな大行列の中をさっそうとくぐり抜け私は自分の位置をキープできた。
「今年こそは行ける!」
と心の中でつぶやいた私は、いつも飛ばしすぎで失敗する5キロ10キロを予定通りのキロ5分ペースで通過した。
いつもペースが落ち始める15キロも全くの予定通り1時間14分台で通過。更にはいつも歩き出す17キロ付近も何とかクリアし、何とかペースを維持するどころかやや余裕を感じた。
20キロを1時間38分台でクリアすると、一度も歩かないまま競技場へ近づいてきた。今までにないことに私の気持ちは晴れ晴れとしてきて、いつもは完全に歩いている頃なのに何故かペースアップしていた。
そして、残り1キロの表示が見える頃、最後の地味な上りが続くのである。私は「絶対に歩かない」と心に誓っていたので歩きはしなかったが、明らかにペースは落ちていた。真駒内競技場周りの地味な登りはハッキリ言って長い!
まさに最後の、最後の力をふりしぼって私はゴールラインに向かってダッシュした。そしてタイムは、
「1時間43分49秒」
目標には3分以上届かなかったが、前年までの自己ベストを10分近く更新した。
そしてその日は気持ちのいい祝杯をあげた。
何だか初めて満足できた大会だった。
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