トライアスロンへの道 その2

 

市民プールでは老若男女が様々なことをしていた。

25mを何回も往復して長い時間泳いでいる人、ひたすらバタフライの練習をしてゼイゼイいっている人、平泳ぎなのか犬掻きなのか解らないまま進んでいる人、とにかく前だけを見つめて端の方を歩いている人

 

色んな人がいたが、私は「これからトライアスロンをするんだ」という気持ちで、小学生の頃プール学習で25m泳いだ記憶を頼りにクロールを泳いでみた。

「バシャバシャ、バタバタ!」「苦しい…」と思い足を付けると、なんと25mの半分も進んでいない。しかも息は完全に上がりそのまま続けて泳げる状態じゃない。本に載っていた手の動きや息継ぎのやり方など完全に頭から飛んでいた。

 

しかし、私はそれから何度も泳ぎ続けた。いや、正確に言うと泳ぎのマネをしていた。そう、私は完全に泳げなくなっていた。

市民プールでの初練習で完全に泳げないことが発覚したにも関わらず、その時の私は意外にも楽観的だった。まだ1ヶ月以上あるし最悪でも25m泳いで休んで…というのもありだろう。と、全く泳げないにも関わらず超楽観的な当時の私がいた。

そんなわけで、私は市民プールで全く進歩のない練習は続いた。

 

水泳はさておき、一方では自転車をどうするかという問題もあった。

その時の私は自転車を持っていなかったし、わざわざ買うという選択肢も考えられなかった。そんな時、私を誘ったY氏が知り合いから自転車を借りられるかもと言ってきたので、私は迷わずその自転車を借りることにした。

 

自転車を貸してくれるのはY君の知り合いの自転車店だった。自身も自転車レースやトライアスロンに参加しているという店長は、手入れの行き届いた自転車を貸してくれた。今で言うクロスバイクのようなタイプでちゃんとメーターまで付いていた。

私は早速、その自転車で走り出した。

普段ジョギングしている公園周りをグルグルと走ってみた。高校生以来の自転車だったが、とても気持ちよくいいペースで走れた。30分ほどの練習ではあったが、またもや自分の中で楽観的な自信が芽生えた。

 

そして、そんな根拠の無い自信を持ったままトライアスロン体験会当日を迎えた。

 

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