トライアスロンへの道 第10話 泳げないけど大会に

トライアスロンへの道

スイミングスクールに通い始めて、しばらくの間は基本動作の繰り返しだった。

バタ足。

潜る。

浮く。

スカーリング。

そして、またバタ足。

私としては一刻も早く泳ぎたい。

何しろ、大会まで3か月を切っている。

しかし先生は、そんな私の焦りなど全く気にする様子もなく、一つ一つ基本を教えてくれた。

今思えば、それは当然だった。

私は泳げない。

本当に泳げない。

水泳経験のある人からすれば、「クロールなんて腕を回して息継ぎすればいいじゃないか」と思うかもしれない。

ところが、私にとってはそんな簡単な話ではない。

そして、何時間も基本動作を繰り返した後、ついにクロールの息継ぎを教えてもらうことになった。

「今日は息継ぎをやってみましょう」

私は、

「ついに来たか!」

と思った。

これができれば、いよいよ普通に泳げるようになる。

そんな期待をしていた。

ところが――

最初の一回で、鼻に水が入った。

痛い。

もう一度やっても、

痛い。

またやっても、

痛い。

鼻の奥に水が入る。

ツーンとする。

苦しい。

何度やっても上手くいかない。

「息継ぎって、こんなに難しいのか……」

考えてみれば、当たり前である。

私はそれまでの人生で、泳ぎながら息継ぎをしたことなど一度もない。

いい大人になってから、人生で初めて経験するのだ。

そんなものが、何回か練習しただけで上手くできるわけがない。

それでも私は焦っていた。

大会まで時間がない。

2000m泳がなければならない。

しかも海である。

頭の中では相変わらず「2000m」という数字がグルグルしていた。

目の前では、たった数メートルのクロールで息継ぎに失敗している。

この差があまりにも大きい。

それでも、少しずつ練習するしかなかった。

そんなある日、Yさんたちから、

「小規模のトライアスロン大会があるよ」

という話を聞いた。

私は考えた。

本番の大会はいきなり過酷なものになる。

だったら、その前に一度、実際の大会を経験しておいた方がいい。

水泳も、自転車も、ランニングも、本番の雰囲気を知っておけば少しは安心できる。

「慣れるためにも、出てみよう」

そう思った。

もちろん、この時点で25mを泳ぎ切れない。

当然、まだまだ不安だらけだった。

それでも出場することにした。

ところが――

ここで私は、またやってしまう。

前年の体験会でも、トライアスロンのことを何も知らないまま参加して、周りを見て「何だこれは」となった。

そして今回も、

同じような過ちを繰り返してしまう。

しかも今回は「練習のための大会」だと思っていたので、少し気持ちにも余裕があった。

いや、

余裕があったというより、

何も分かっていなかった。

大会というものは、実際にその場に立ってみないと分からないことがある。

まして私は、まだトライアスロン初心者。

水泳についても、ようやく息継ぎの練習を始めたばかり。

そんな状態で、また一つの大会に飛び込もうとしていた。

果たして今回は、何をやらかしたのか。

そして私は、そこで何を学ぶことになるのか――。

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