トライアスロンへの道 第25話 バイクで走りだした

トライアスロンへの道

ようやく自転車が動き出した。

私はペダルを踏んだ。

「やっと出発できた……」

振り返る。

誰もいない。

……いや、正確には、かなり後ろのほうに選手がいる。

でも、前にはほとんどいない。

まあ、当然だ。

泳ぎで遅れた。

その後、ウェットスーツを脱ぐのにも手間取った。

パンツまで脱げた。

さらに自転車の後輪まで動かなかった。

トランジションだけで、かなり時間を使っている。

でも、スタートして間もなく、左側のペダルが気になった。

クリートを外す。

*クリートとはバイクシューズに固定されている金具でペダルを固定する形状になっている。

もう一度はめる。

カチッ。

「ちょっと緩いな……」

そう思った私は、ペダルの固定を少し強くした。

これが後になって、思わぬことにつながるのだが、この時はそんなことを知るはずもない。

おそらく私は、

この時点でほぼ最下位だった。

200キロ走る練習だってしてきた。

だったら、ここから追い上げればいい。

そう思った。

「よし、ここからだ」

自転車を走らせる。

増毛から留萌方面へ向かう。

最初は軽快だった。

海岸線を走る。

風を受けながら、自転車が進んでいく。

「あれ?」

意外と気持ちいい。

もちろん、周りの選手はどんどん先へ行っている。

でも、自分のペースなら走れる。

これまで練習してきた距離を考えれば、200キロだって何とかなる。

そう思えてきた。

すると、前方に一人の選手が見えた。

「おっ!」

少しずつ近づいていく。

抜いた。

さらに前に、また一人いる。

また抜いた。

「おお、追いついてきた!」

さっきまで最下位だと思っていたが、少しずつ順位を上げている。

これはいける。

そんな気持ちになってきた。

これまでの練習で慣れてきたペダルを回す。

呼吸する。

景色を見る。

海岸線を進む。

さっきまでの緊張も、少しずつ消えてきた。

そして、また前の選手に追いついた。

一人抜く。

また一人。

「おお、いけるじゃないか」

最下位からの逆襲である。

……と思った。

ところが、この時点で私はまだ知らなかった。

今から走る距離が、

200キロ以上あることを。

しかも、まだスタートしてからほんの少ししか進んでいない。

「追い上げる」と言っても、先はあまりにも長い。

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