トライアスロンへの道 第26話 日本海を眺めて進む

トライアスロンへの道

増毛をスタートして、ようやく自転車が走り出した。

スタート直後は、ほぼ最後尾。

スイムで遅れ、トランジションでも遅れ、自転車の後輪まで外れていたのだから、これは仕方がない。

「まあ、ここからだ」

そう思ってペダルを踏んだ。

増毛から留萌へ向かう。

海岸線を走っている。

天気は小雨だった。

でも、走り出してみると、意外と気持ちがいい。

スイムであれだけ苦しんだ後なので、自転車に乗った途端に呼吸が楽になった。

「ああ、自転車って楽だな」

そんなことを思った。

もちろん、まだ始まったばかりである。

ここで「楽だ」と思っていること自体、後から考えればかなり危ない。

しばらくすると、前に選手が見えてきた。

少しずつ近づく。

追いつく。

抜く。

また前にいる。

また追いつく。

また抜く。

さっきまで最下位だったはずなのに、少しずつ前の選手に追いついている。

これは気分がいい。

「おっ、俺、結構走れるじゃないか」

などと思ってしまう。

留萌に入る。

ここには、事前に先輩から注意されていた場所があった。

途中にある、直角に近いカーブだ。

「ここは危ないぞ」

と聞いていた。

毎年のように転倒する選手がいるらしい。

そんな場所で、私はもちろん攻めるわけがない。

十分にスピードを落として、慎重に曲がる。

無事通過。

「よし」

自転車に乗っているだけなのに、ちょっとした達成感がある。

その先も海沿いを北へ進む。

留萌を抜け、小平方面へ。

練習では、30km、40km走るだけでも大変だった。

それが今日は、もう何十kmも走っている。

しかも、まだ身体は動いている。

ロードバイクにも少し慣れてきた。

以前はペダルを「押す」ことしか考えていなかった。

先輩に、

「ペダルは押すんじゃなくて回すんだ」

と言われて、ようやく少し意味が分かってきた。

円を描くようにペダルを回す。

その感覚で走っていると、長い距離でもそれほど苦にならない。

やがて最初のエイドステーションが見えてきた。

ここで、私は自転車を止めた。

大会の説明では、ボトルを受け取って、そのまま走りながら飲むこともできる。

しかし私は、そんな器用なことができない。

止まる。

降りる。

受け取る。

飲む。

食べる。

そしてまた乗る。

周りの選手はどんどん先へ行く。

せっかく何人か抜いたのに、また抜かれる。

でも、もう気にしない。

200kmもあるのだ。

数分くらいどうってことない。

それよりも、エイドで受け取ったサンドイッチがうまい。

「これはうまいなあ」

泳いだ後、自転車を何十kmも走った身体には、サンドイッチがごちそうだった。

食べ終わって、再び自転車に乗る。

小平を抜け、苫前方面へ。

海がずっと左側に見えている。

自転車で走っていると、景色がどんどん後ろへ流れていく。

練習とは違う。

今日は大会なので、道路沿いに人がいる。

声をかけてもらえる。

「頑張れ!」

「ありがとうございます!」

そんなやり取りをしながら走る。

そして、さらに北へ。

苫前を過ぎ、羽幌方面へ向かう。

ここまで来ると、スタート直後の緊張感はすっかりなくなっていた。

スイムであれほど怖かった海も、今は自転車から眺めているだけなら気持ちがいい。

「トライアスロンって、結構面白いな」

そんなことまで思っていた。

やがて羽幌付近。

沿道からも声がかかる。

スタートしてからかなり時間が経っている。

時計を見る。

もう昼近くになっていた。

そして、ふと距離を考える。

ここまでで、およそ100km。

200kmのちょうど半分だ。

「半分まで来たか」

これは大きかった。

朝、増毛で海に入ったときには、

「本当に2,000m泳げるのか?」

と思っていた。

そのスイムを終え、パンツまで脱ぎ、後輪まで外れた。

それでも今、自転車で100km近くまで来ている。

しかも、まだ走れる。

身体も、それほど苦しくない。

「このまま行けるんじゃないか?」

少し、そんな気持ちになっていた。

ただ、ここで一つ気になった。

思った以上に汗をかいている。

気温はそれほど高くない。

なのに、身体はかなり暑い。

「ちょっとペース速いのかな?」

と思った。

何しろ、この先まだ100km近くある。

そして、自転車が終わったらランニングだ。

42km近く走る。

そこまで考えると、

「まあ……そのときになったら考えよう」

となる。

何せ、初めてのロングトライアスロン。

先のことを考えても、何が正解なのか分からない。

とりあえず、

今は自転車が楽しい。

それだけである。

私はまたペダルを回した。

羽幌を過ぎ、さらに北へ。

ここから先、まだまだ自転車は続く。

そして、この先で私は初めて、

「日本海を自転車で走る」ということの意味を思い知らされることになる。

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