①【概要】ギックリ腰と猛暑で迎える、試練のサロマ100km
コロナ禍を挟み4年ぶりの出場となった2023は「無事に完走できるか」という高揚感混じりの不安でしたが、2024年のスタートラインに立つ私の胸中にあったのは、それとは異なる不安でした。
大会3ヶ月前の3月、不意にギックリ腰を発症してしまったのです。
春先の最も重要な走り込みの時期に練習量が大幅に減少し、ウルトラにおいて練習不足がどれほど牙をむくか分かっているからこそ焦る日々が続きました。さらに追い打ちをかけるように、直前の天気予報では「猛暑予想」が出て、55歳を迎えた私にとってまさに試練の大会になる予感がしていました。
大会前夜は生田原で前泊、当日朝は長年のルーティン通りおにぎり1個とゼリーを食べて体を目覚めさせます。薄暗い午前4時頃に湧別町の会場へ到着し、パンをかじりながら荷物の最終整理をして、トイレの長い列に並びスタートラインに着いたのは号砲のわずか5分前でした。
事前の予報通り暑くなると思われましたが、午前5時のスタート時点ではいつも通りの静かで涼しい湧別町に思えました。
有難いことに今年も「サロマンブルー枠」からのスタートだったため、一般ランナーの混雑を回避してロスタイムはわずか48秒。この恩恵に深く感謝しながら、私の長い旅が幕を開けました。
②【スタート〜30km】湧別から三里浜へ「見ざる聞かざる言ざる」でやり過ごす
スタートからしばらくは湧別町内をして、5km地点でスタート付近へ戻ってくるコースレイアウトです。
周囲のランナーは元気よく飛び出していきますが、3月のギックリ腰以降、思うように距離を稼げなかった私の体は、まだ半分眠っているような感覚でした。無理にペースは上げず淡々と進み、最初の10kmは1時間4分(キロ6分24秒)という想定通りの静かな立ち上がりでした。
10kmを過ぎると、コースはオホーツク海を左手に望む三里浜の直線へと向かいます。この辺りから徐々に気温が上がりだし、太陽がジリジリと牙をむき始めました。
「練習不足の足がこの暑さに耐えられるか」と弱気になりますが、焦らずラップを刻むことだけに集中し、20kmは2時間11分(この10kmは1時間7分)で通過。暑さを考慮しつつも余力を残して進みます。
30km地点はやや内陸地にあるため、アスファルトからの照り返しによるジリジリとした強烈な暑さを感じます。しかし本当の暑さはこれからだと思い、余計なことは何も考えないようにして淡々と走りました。30km通過は3時間16分(この10kmは1時間5分)でした。
周りの選手からは異口同音に「暑い、暑い!」という悲鳴ばかりが聞こえてきますが、私は心の中で「見ざる聞かざる言わざる」戦法を決め込みました。暑いという言葉は聞かない、苦しむ姿は見ない、自分からも絶対に口にしない。すべては気のせいだと思い込むだけ。
③【30km〜60km】トイレとエイドでの決断、そして足の重み
35kmを過ぎる頃に途中でトイレ(大)をしたため少し時間が経過していましたが、てコースに戻るとサロマ名物のブラスバンドの前ではついついアドレナリンが出てペースが上がってしまいます。トイレロスを取り戻すように足を動かし、40kmは4時間25分(この10kmは1時間9分)、通常のフルマラソンの距離である42.195kmを4時間39分で通過しました。

ここからサロマの暑さは本当の本番を迎えますが、とにかくここからは無心で走ることに決めていたため、このあたりの記憶は暑さのせいか今でもほとんどありません。
50km通過は5時間30分(この10kmは1時間4分)。私の中ではこの50km前後が一番暑く、地味な高低差もあるため最大の頑張りどころと考えています。42kmを過ぎると足全体にズシリとした鉄板が入ったかのように重くなるので、前に進むこと、歩かないことだけを考え、55kmのエイドで何を食べるかを想像して必死に気を紛らわせました。

いつも55kmのレストステーション(大エイド)では、筋肉が固まるのを防ぐために「絶対に腰を下ろさない」というのを鉄則にしていましたが、今年は何故かゆっくり腰を下ろして休みました。腰の不安、練習不足の足、そして猛暑。
一度頭をスッキリとリセットしておかなければ、後半を戦い抜けないと本能が察知したのです。水分を補給して心を整え、60kmは6時間49分(この10kmは1時間19分)で通過しました。
④【60km〜ゴール】魔女の森、そしてワッカ。55歳の反省と誓い
60kmを過ぎると、それまでのうだるような暑さが嘘のように気温も気分も一気に涼しくなります。これまでは周りの声援もあり頑張ろうという気になれましたが、この辺りからランナーもまばらになり、色んな意味でペースも気分も落ちてきます。
サロマ最大の難所と呼ばれる「魔女の森」辺りでは本当に歩きそうなくらい辛かったですが、何とか持ちこたえ、「本当のウルトラマラソンはこれからなんだ」と自分を奮い立たせ、70kmを8時間10分(この10kmは1時間19分)で通過しました。
この辺はもう少し頑張れるつもりでいましたが、暑さによるダメージなのか足が鉛のように重く、他の選手に次々と抜かれます。
次はお汁粉をモチベーションにして歩かないことだけを考えて気力で走りました。ふと頭を上げると、道路に手作りの横断幕が引かれていました。以前からあったのかもしれませんが、今まで気づかずこの地域からの温かい応援が身に染みます。80km通過は9時間30分(この10kmは1時間19分)です。

いよいよ最終決戦の地、ワッカ原生花園へと突入します。ワッカの出入り口は波の浸食により昨年通行止めになっていましたが、今年は仮通行が出来るようになっていました。やはりこの果てしない自然の光景を見ると、サロマに来たという実感が湧き上がります。
しかし、感動とは裏腹に足の重さはどんどん悪化していきました。これは暑さのダメージというより、やはり3月のギックリ腰以降の圧倒的な練習不足の影響だなと痛感し、「来年は冬場もしっかり走り込みが必要だな」と暫し反省。90km通過は10時間55分(この10kmは1時間24分)まで落ちていました。
昨年は最後までそれなりに走れていたはずでしたが、今年はワッカの後半から耐えきれず、時々歩くことが多くなってしまいました。練習量の割に前半のペースが速かったことを少し悔やみましたが、その日の天候や気温、体調によっても展開は変わるので、ウルトラはある意味で「ギャンブル」でもあります。
私の記憶の中でワッカでこれほど苦しんだのはかなり久しぶりの感覚でしたが、時々歩きながらも少しでも走る時間を増やし、ゴール目指して前に進みました。
そして100km、12時間25分(この10kmは1時間25分)で無事にフィニッシュ。
今年は反省が多く来年に向けての課題が増えたレースとなりましたが、55歳の私にとって、これからは年齢(衰え)との戦いでもあります。昨年はそれなりに満足できる練習を積んだにもかかわらず思ったような結果が出せなかったことから、「もう年齢的に限界なのかな…」と思う気持ちと、「まだまだ頑張りたい!」という気持ちが激しく交錯しています。



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