トライアスロンへの道 第7話 ロードバイクの奥深さ

トライアスロンへの道

ロードバイクを手に入れた。

これでいよいよトライアスロンの練習ができる。

……と思った。

ところが、ロードバイクが完成した頃には、北海道はすっかり冬だった。

雪が積もっている。

当然、ロードバイクには乗れない。

それどころか、普段のランニングだって思うようにできない。

せっかくトライアスロンを目指すことになったのに、いきなり冬眠である。

ロードバイクは部屋の中で出番を待っている。

私も同じように、春が来るのを待っていた。

そして、ようやく雪が解け始めた翌年の春。

私はYさんたちトライアスロン軍団と一緒に練習することになった。

最初は、それほど無茶な練習ではなかった。

短い距離を走ったりする感じ。

「これなら何とかなるかな」

そんな気持ちだった。

ところが、ある日の練習で突然、

「今日は40kmラン走るぞ」

と言われた。

「……40km?」

一瞬、聞き間違いかと思った。

私はフルマラソンを走っている。

だから40kmという距離を何度か走ったことはある。

でも、それは大会で走る距離だ。

練習で走る距離ではない。

少なくとも、私にとっては。

それでも、みんなが走るという。

仕方がない。

私もついていくことにした。

走り始めた時は、まだ何とかなった。

ところが、20kmを超え、30km近くになると、だんだん様子がおかしくなってきた。

お腹が空いてくる。

というより、体に力が入らない。

当時は今ほど補給について考えていなかった。

「まあ、走れば何とかなるだろう」

くらいに思っていた。

ところが、何とかならない。

明らかにエネルギーが切れている。

いわゆるハンガーノック状態である。

足が動かない。

それでも、みんなは普通に走っている。

私は必死についていった。

「なんで俺、こんなことやってるんだ……」

そんなことを思いながら、何とか40kmを走り切った。

ゴールした時には、もうヘロヘロ。

練習というより、ちょっとした罰ゲームだった。

「こんなことを毎回やるのか?」

そんな不安さえ感じた。

ところが――

その後に出場したハーフマラソンで、妙なことが起きた。

なんと自己ベストを4分も更新してしまった。

「え?」

自分でも驚いた。

ついこの間まで40km走って死にそうになっていた男が、ハーフマラソンで自己ベストを更新している。

もちろん、40km走ったことだけが理由ではないだろう。

それまでのマラソンの練習や積み重ねもあった。

でも、自分の中では、

「もしかして、あの40kmって意味があったのか?」

という気持ちも少し出てきた。

少なくとも、トライアスロンの練習について、

「思っていたより何とかなるかもしれない」

と思い始めた。

そして、いよいよ次の問題に取り掛かる。

ロードバイクである。

冬の間、部屋の中で眠っていたロードバイクを、ついに外へ出す。

ここから本格的に自転車の練習が始まる。

もちろん私は、ロードバイクの乗り方なんてよく分かっていない。

ギアの使い方もよく分からない。

どのくらいのスピードで走ればいいのかも分からない。

そもそも、これから何十キロも自転車で走るということ自体、まだ現実味がなかった。

ただ一つ分かっていたのは、

「これまでのランニングとは、何か世界が違うぞ」

ということだった。

そして、私は最初のロードバイクで、いきなり転ぶ。

「立ちごけ」というやつである。

バイク専用のシューズをペダルに固定するので、最初はペダルを回すこともできない。

トライアスロン軍団にいきなり笑われてしまった。

でも、最初は30km程度の練習。

まだこの時の私は、

「トライアスロンを目指している」

というより、

「Yさんたちに付いていったら、何か凄いことが始まるかも」

くらいの感覚だった。

気がつけば私は、そのトライアスロンの世界から簡単には抜けられなくなっていた。

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