バイクを終えたのは、制限時間の約15分前だった。
そこからランニング。
距離は41.8km。
普通に考えれば、
「これからフルマラソンか……」
となる。
でも、このときは普通ではない。
すでに2,000m泳いでいる。
自転車を約200km走っている。
そのあとに、フルマラソンとほぼ同じ距離を走る。
しかも左膝が痛い。
「本当に走れるのか?」
スタートしてすぐから、そんなことを考えていた。
F先生と一緒に走り始めた。
最初は、とにかくゆっくり。
それでも身体が重い。
膝裏も痛い。
それでも前へ進む。
ランコースは、自転車で走ってきた道を戻っていく。
朝、自転車で通った場所を、今度は自分の脚で戻る。
それだけでも不思議な感じがした。
エイドステーションがある。
水を飲む。
何か食べる。
それほど食欲があるわけではない。
でも、食べる。
ここでも、身体のことをよく分かっていない。
今思えば、もっとエネルギーを入れなければならなかったのだろう。
それでも、少しだけ食べて走るような状態。
10kmくらいまで来た。
坂がある。
自転車では何とも思わなかったような坂が、今は長く感じる。
身体が前に進まない。
それでも歩かない。
いや、歩いていたところもあったかもしれない。
記憶はかなり曖昧だ。
ただ、前へ進んでいた。
時間が経つ。
午後5時頃になると、気温も下がってきた。
エイドに着いても、食べ物を取るのが面倒になってくる。
身体も冷えてくる。
それでも走る。
そして、21.5km地点の関門が近づいてきた。
ここには制限時間がある。
このロングトライアスロンは、ただゴールまで行けばいいわけではない。
途中にも関門がある。
一つでも間に合わなければ、そこで終わる。
私は、そのことを十分に理解していたわけではなかった。
ただ、前へ進む。
21.5kmの関門が近づく。
F先生と一緒に走っていた。
でも、膝裏がかなり気になる。
私はF先生に、
「ちょっとトイレに行ってきます」
と言って離れた。
本当は、少し膝を伸ばしたかった。
トイレの中で、膝を伸ばす。
痛い。
「もう、やめようかな……」
一瞬、本気でそう思った。
ここまで来た。
スイムも終わった。
バイクも終わった。
もう十分じゃないか。
そんな気持ちが出てきた。
それでもトイレから出た。
道路を見る。
先を走っている選手がいる。
自分より年上に見える人もいる。
みんな走っている。
「じゃあ、俺も行けるところまで行こう」
そう思った。
再び走り始めた。
そして、21.5kmの関門を通過した。
その少し先だった。
スイミングスクールの先生がいた。
大会スタッフとして、ランコースに立っていたのだ。
私の姿を見つけると、
「すごいよ、頑張って!」
と声をかけてくれた。
その言葉を聞いた瞬間、
「絶対にゴールしなきゃ」
と思った。
泳げなかった自分に、泳ぎを教えてくれた先生。
その先生に、今ここで応援されている。
ここで終わるわけにはいかない。
膝裏は痛い。
身体も重い。
でも、もう一度前を向いた。
21.5km。
まだ半分近く残っている。
そして、だんだん暗くなってきた。
ここから先は、さらに厳しくなる。
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