トライアスロンへの道 第29話 膝裏が痛い

トライアスロンへの道

バイクを終えたのは、制限時間の約15分前だった。

そこからランニング。

距離は41.8km。

普通に考えれば、

「これからフルマラソンか……」

となる。

でも、このときは普通ではない。

すでに2,000m泳いでいる。

自転車を約200km走っている。

そのあとに、フルマラソンとほぼ同じ距離を走る。

しかも左膝が痛い。

「本当に走れるのか?」

スタートしてすぐから、そんなことを考えていた。

F先生と一緒に走り始めた。

最初は、とにかくゆっくり。

それでも身体が重い。

膝裏も痛い。

それでも前へ進む。

ランコースは、自転車で走ってきた道を戻っていく。

朝、自転車で通った場所を、今度は自分の脚で戻る。

それだけでも不思議な感じがした。

エイドステーションがある。

水を飲む。

何か食べる。

それほど食欲があるわけではない。

でも、食べる。

ここでも、身体のことをよく分かっていない。

今思えば、もっとエネルギーを入れなければならなかったのだろう。

それでも、少しだけ食べて走るような状態。

10kmくらいまで来た。

坂がある。

自転車では何とも思わなかったような坂が、今は長く感じる。

身体が前に進まない。

それでも歩かない。

いや、歩いていたところもあったかもしれない。

記憶はかなり曖昧だ。

ただ、前へ進んでいた。

時間が経つ。

午後5時頃になると、気温も下がってきた。

エイドに着いても、食べ物を取るのが面倒になってくる。

身体も冷えてくる。

それでも走る。

そして、21.5km地点の関門が近づいてきた。

ここには制限時間がある。

このロングトライアスロンは、ただゴールまで行けばいいわけではない。

途中にも関門がある。

一つでも間に合わなければ、そこで終わる。

私は、そのことを十分に理解していたわけではなかった。

ただ、前へ進む。

21.5kmの関門が近づく。

F先生と一緒に走っていた。

でも、膝裏がかなり気になる。

私はF先生に、

「ちょっとトイレに行ってきます」

と言って離れた。

本当は、少し膝を伸ばしたかった。

トイレの中で、膝を伸ばす。

痛い。

「もう、やめようかな……」

一瞬、本気でそう思った。

ここまで来た。

スイムも終わった。

バイクも終わった。

もう十分じゃないか。

そんな気持ちが出てきた。

それでもトイレから出た。

道路を見る。

先を走っている選手がいる。

自分より年上に見える人もいる。

みんな走っている。

「じゃあ、俺も行けるところまで行こう」

そう思った。

再び走り始めた。

そして、21.5kmの関門を通過した。

その少し先だった。

スイミングスクールの先生がいた。

大会スタッフとして、ランコースに立っていたのだ。

私の姿を見つけると、

「すごいよ、頑張って!」

と声をかけてくれた。

その言葉を聞いた瞬間、

「絶対にゴールしなきゃ」

と思った。

泳げなかった自分に、泳ぎを教えてくれた先生。

その先生に、今ここで応援されている。

ここで終わるわけにはいかない。

膝裏は痛い。

身体も重い。

でも、もう一度前を向いた。

21.5km。

まだ半分近く残っている。

そして、だんだん暗くなってきた。

ここから先は、さらに厳しくなる。

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