2014北海道マラソンレポート アイアンマン翌週に挑んだ鉄の自制心

大会レポート

2014年大会・公式データ

  • 開催日: 2014年8月31日
  • 天候: 晴れ
  • 気温 / 湿度: 21.8℃ / 58%
  • 制限時間: 5時間
  • 出走者数: 12,922人
  • 完走者数: 10,193人(完走率 78.9%)

2007年のリタイアが変えた、私の「体調管理ロジック」

2004年に初めて出場して、ケガなどで2年休養後は8年連続出場となる北海道マラソン。

私の中で唯一の苦い記憶がある。2007年大会だけは、32キロ付近で太ももがピキッと攣ってしまい、動けなくなったところを後続車両に止められて無念のリタイアを喫している。

それからは体調管理や栄養素などを自分なりに徹底的に研究し、スタミナ強化なども含めて色々試しながら大会に出場するようになり、その後は足が攣って走れなくなるようなことはなくなった。

今年もすでにマラソン・トレラン・ウルトラ・トライアスロンなど6つの大会に出場しているが、いまだにレース中に走れないほど身体が「壊れた」状態にはなっていない。自分としてはレースに向けての調整をきっちりやってきた証拠だと思い込むようにしている。

ただ、北海道マラソンの2週間前には羊蹄山を3回登り左の太ももを負傷、その翌週には226kmのアイアンマントライアスロンに出場して更に悪化させていた。当然、大会直前は一切の練習を休み回復に努めたが、太ももに不安を抱えたままのレースとなった。

例年通りの暑さと、Cブロックでの出会い

そうは言っても、あっという間に大会前日になる。

前日に受付を済ませた時は、夜遅い時間でもボランティアの人達が準備に追われていた。数千人のボランティアの方々は当日だけではなく、その前後も様々な作業があるであろう。本当に頭が下がる。

天候も例年通りと言った感じで、暑さだけはそれなりに耐久性があると思っているので特に気にしないことにした。

私が並ぶのはCブロック。駅前通を完全に占拠するようにランナーが集まってくる。私は軽くアップをしながら走れる状態なのかどうか確かめ、スタート25分前にブロックに入る。

するとその最後尾には、サブスリーまであと2分という記録を持つTさんがいた。その後はスタートまでTさんと最近のレースについて色々話した。

そんな話をしているとあっという間にスタート5分前になり、時計を合わせようと思ったがなかなかGPSが衛星を拾ってくれない。結局スタート時間になってもGPSは衛星を探している状態だったので、一旦GPSを切ってスタートしたら、何故かGPSがスタートしていた。よく分からないけど、スタートから数十秒してGPSはちゃんと動き出した。

【スタート〜10km】課した「3つの鉄則」と創成トンネルの罠

Cブロックはスタートからそこそこ動きはいいが、ダラダラ歩いて走ってまた歩いて、という感じでスタートラインを通過したのは1分31秒。昨年より1分半早いのでまあまあの滑り出し。

このスタートラインを越えた瞬間、Cブロック最後方の「3,391位」から逆襲が始まった。

今年のレースに向けて、私は三つのルールを作っていた。まず一つ目は5キロまでは絶対キロ5分以内で走らない。二つ目は、20キロまでは歩幅を意識して小さくする。そして三つ目は、残り5キロくらいから徐々にスパートをかける。この三つを守って走れば、足の爆弾を破裂させずに納得のタイムが出るはずだと考えていた。

そんなことを考えているうちにあっという間にすすきのを過ぎて、中の島から平岸に入る。

  • 5km通過:28分01秒(区間26:30) 【477人抜き / 2,914位】

確かにキロ5分を超えてはいるが、さすがに1キロまでの初動ペースが遅すぎた。しかし、絶対に序盤で焦ってはいけない。とにかく自分の底力を信じてしっかりキロ5分を刻めばいいだけだ。

ただ、この辺は毎年徐々に暑さを感じる場所で、今年もしっかり汗だくになりつつあった。給水はちゃんと場所を考えて取り、体にもある程度水を掛けることが出来たのでまずは合格点だろう。

その後は道マラ好例となりつつある創成トンネルに入る。正直言ってこのトンネルにいい印象はない。ヌルイ汗臭い感じに酔ってしまいそうで早く日光の下に出たい。暑さがこもってしまうので、帽子を取りシャツを時々まくって空気の循環に心がけた。

  • 10km通過:52分47秒(区間24:46) 【179人抜き / 2,735位】

この辺までは緩い下りなので歩幅が大きくならないように心がけながらも、ちゃんとキロ5分以内はキープできた。10キロを過ぎてから札幌駅北口周辺の応援はなかなか熱い。ファンランのゴールが近いこともあり、応援にも気合いが入っているように感じられた。

【15km〜30km】外反母趾の激痛と、大腿直筋の悲鳴

  • 15km通過:1時間18分09秒(区間25:22) 【42人抜き / 2,693位】

その後ちょっとペースが落ちたが、そんな細かいことは気にしない。多少心拍数が上がってもいいので、クイックステップで太ももへの負担を極力避けなければならない。

しかし、毎年のことではあるが、この新琴似から新川に入る辺りで必ず左足の外反母趾が痛んでくる。他の場所では痛くないのにここに来ると必ず痛くなるなんて、パブロフの犬か?というくらいの反応を示してくれる。あまり嬉しくないほど素直な奴だ。

  • 20km通過:1時間43分16秒(区間25:07) 【143人抜き / 2,550位】
  • 中間地点:1時間48分53秒(区間5:37) 【2,526位】

外反母趾の痛みを我慢しながらも何とか5分ペースは維持できている。しかし、この新川通の往復はなかなか厄介で、その日の天候がダイレクトに現れる場所でもある。最初の5キロ以外はそんなに暑さを感じないまま来られたが、ここに来て太もも重く感じてきた。

大腿四頭筋の中の真ん中にある「大腿直筋」というソケイ部から膝に向かって伸びる筋肉が、バリバリに張ってきた。トレランやロードバイクでよく使う筋肉なので、この2週間でしっかり痛めつけてきた筋肉だ。でも、折返しまでは何とか踏ん張ろうと思い折り返す。

  • 25km通過:2時間08分44秒(区間19:51) 【113人抜き / 2,413位】
  • 30km通過:2時間35分04秒(区間26:20) 【125人抜き / 2,288位】

後でGPSのラップを見ると24キロくらいから、1キロ毎に3秒ずつくらいタイムが落ちているのが分るが、その辺はある程度仕方がない。

と思っていると、後ろからTさんが「やっと追いついた〜」と追い上げて来てるではないか!凄い気力だなぁと思いつつも、私がひと言「太ももが重い」と言うと「そりゃ1週間前にアイアンマン走ってるんだもん、当たり前でしょう」などと会話をしながら暫し並走した。

【35km〜40km】追いつかれた男の妙な力と、ラストのスパート

しかし、何故かここで私は給水を利用してTさんを一気に突き放した。まるで優勝争いをしているかのようなフェイントでスッと前に出た。本来ならどんどん落ちるはずのタイムが何とか5分20秒くらいで留めることが出来た。

  • 35km通過:3時間01分45秒(区間26:41) 【252人抜き / 2,036位】

この辺まで来るとゴールタイムが計算出来てくる。まず、自己ベストを更新するのはちょっと現実的ではないことは分る。キロ5分なら3:40を切れるかどうか、キロ6分なら3:45くらい。何かイマイチ平凡すぎるタイムでちょっとテンションが下がる。

ただ、北大構内に入る辺りが残り4キロになるので、その看板を見てから思い出したようにペースを上げてスパートを始める。周りにいるランナーたちも中途半端なタイムになりそうなのでダラダラ走っている中、私は一人息をハァハァ言いながら徐々にペースを上げてみた。

  • 40km通過:3時間29分25秒(区間27:40) 【148人抜き / 1,888位】

私のGPSによるとキロ5分を切れていたのは40キロを過ぎてからで、意外にペースがほとんど上がっていないことが判明した。しかし、その時は自分の中では精一杯の走りをしていた。1週間前のアイアンマンを言い訳にはしたくないが、とにかく太ももの重さは尋常ではなく昔の私なら絶対に歩いているほどの苦しさだった。

でも、ヨドバシカメラを過ぎて道庁に入る頃には確実に4分半のペースで走っていた。 そして、大通りの曲がり角には沢山の応援が見える。誰だか分らないこんなおっさんランナーに「ガンバレー!」「もう少しー」「ラストスパート~」などと涙が出そうなくらい嬉しい声を出してくれる。

大通りを西に向かって折れると徐々にタイム掲示が見えてくる。徐々に近づくと「3時間39分43秒」くらいの数字が見えた。あと100mくらいだろうが、全力で走れば30分台でゴールできるかも、と思うと私は残った力全てを出して、39分59秒の表示を見ながらゴールした。後でGPSを見ると、最後の大通は3分32秒のペースで疾走していた。

エピローグ:デジタルは嘘をつかない。手元のチップが証明した「真実の38分台」

  • Finish:3時間40分00秒 【最後の100人抜き / 総合1,788位】

私は40分切れただろうという満足感で記録証をもらうと、そこには「記録 3時間40分00秒」と書かれていた。

「エーっ!切れてないの~?」

私は一瞬納得いかない表情を見せたが、私の目よりデジタルの方が間違いないよなあと思いながら、荷物の置かれた西3丁目までダラダラと戻ることになった。ゴール地点の西9丁目から荷物のある西3丁目までは本当に遠く、その間に2回ほどしゃがんで休憩を入れた。

そして簡単に身支度をしていると、北大のランニング講習(サブ3.5目標)で一緒だった方がすぐそばにいた。講習に出ていたのに3時間40分ジャストだったなんてちょっと恥ずかしかったが、スマートフォンで速報を確認した瞬間、私の悔しさは心地よい達成感へと変わった。

  • グロスタイム:3時間40分00秒
  • ネットタイム:3時間38分29秒

スタートラインを通過するまでのロスタイムが1分31秒あったため、公式グロスこそジャスト3時間40分00秒という超キリのいい数字になっていたが、自分の足が刻んだ純粋な走行タイムは、まぎれもなく「38分台」をマークしていたのだ。

振り返れば、Cブロックの最後方(3,391位)からスタートし、終わってみれば驚異の「1,603人ごぼう抜き」を達成しての総合1,788位。羊蹄山とアイアンマンで痛めた太ももを抱え、前半をキロ5分で耐え抜いた私の戦略は、ロジカルに大正解だったという充分な証明だった。

もちろん「本当に100%の力を出し切ったのか?」と問われると「95%くらいだったかも」という気もする。ただ、前半を4:45ペースで突っ込んでいたら確実に潰れていただろうし、30キロ以降の落ち込みを最低限に抑えるにはあのキロ5分ペースがベストだったのかもしれない。

ただ、アイアンマンで苦しい思いをした1週間後にこのタイムが出せるなら、ちゃんとした準備をすれば余裕で3時間半は切れるだろう…と勝手な妄想を抱きながら、その日は軽い祝杯をあげた。

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