トライアスロンへの道 第16話 ロードバイクに慣れる

トライアスロンへの道

泳げるようになって、海での練習も始まった。

すると今度は、バイクの練習も本格的になっていった。

それまでにも何度か自転車には乗っていた。

しかし、トライアスロンの自転車は普通の自転車ではない。

ロードバイクである。

見た目からして、普通の自転車とは違う。

細いタイヤ。

曲がったハンドル。

そして、何より困ったのがペダルだった。

トライアスロンをやる人たちは、シューズをペダルに固定している。

いわゆるビンディングペダルだ。

靴とペダルが「カチッ」とくっつく。

走っているときには便利なのだが、乗り始めたばかりの私にとっては、これがなかなかの難関だった。

自転車にまたがる。

ペダルに足を乗せる。

ところが、うまく踏み出せない。

ようやく走り出したと思ったら、今度は足を外すのがうまくいかない。

「これ、どうやって乗るんだ?」

そんな状態だった。

周りの人たちは、何事もなかったようにスイスイ走っていく。

私は自転車の上で、あたふたしている。

感覚としては、自転車というよりスノーボードに乗っているようだった。

それでも、何度か乗っているうちに、少しずつ走れるようになってきた。

最初の頃は、サイクリングロードを30~40km程度。

速く走るというより、とにかくロードバイクに慣れることが目的だった。

しかし、私がロードバイクに慣れるのを待ってくれるほど、練習は甘くなかった。

少し乗れるようになると、今度は一般道へ出る。

一般道をロードバイクで走るのは、これまた勇気がいる。

自転車は基本的に車道の左側を走る。

歩道を走れる場合もあるが、30km/hを超えるような自転車で、歩行者優先の歩道を走るのは現実的ではない。

段差もある。

車も来る。

当然、怖い。

だから私たちは、できるだけ交通量が少なく、歩行者もほとんどいない田舎道を走った。

ところが、そういう場所には、別の問題がある。

坂だ。

ある日の練習では、ゴルフ場のあるような、アップダウンの続く道を走ることになった。

ロードバイクに乗るだけでも精一杯なのに、今度は坂である。

前を走る人たちは、坂道でもどんどん進んでいく。

私はというと、見る見るうちに離されていく。

そして、ある坂で完全に心が折れた。

ようやく頂上までたどり着いたところで、先に待っていた先輩に言った。

「よく、あんな坂をスイスイ登れますね」

すると先輩から返ってきた言葉が、

「ペダルを押してばっかりだから登れないんだろ!」

だった。

……え?

自転車のペダルって、押すものじゃないのか?

私の中では、ペダルは上から下へ踏み込むものだった。

ところが、シューズがペダルに固定されている。

ということは、下へ踏むだけではない。

上へ引くこともできる。

さらに、ペダルは円を描いて回っている。

一周の中で、力をかける場所を考えながら回す。

そんなことを教えてもらった。

なるほど。

……と言いたいところだが、実際にやってみると、これがまた難しい。

今まで普通の自転車でやっていた「踏む」という動作とは、まるで違う。

それでも何度も走っているうちに、少しずつ感覚が分かってきた。

ロードバイクに乗る。

坂を登る。

ペダルを回す。

少しずつ、できることが増えていった。

ただし。

私ができることが増えるのと同じくらいの勢いで、練習距離も増えていった。

最初は30~40kmだった。

それが、いつの間にか100kmを超える。

さらに160km、180km。

本番のバイクは約200kmである。

「本番と同じくらい走っておけば大丈夫だろう」

そんなことを考えていたわけではない。

そもそも、私は何をどれくらい練習すればいいのか、よく分かっていなかった。

ただ、毎週のように先輩たちについて走っていた。

そして気がつけば、ロードバイクに乗ること自体は、以前ほど大変ではなくなっていた。

……しかし、練習はここからさらに変わっていく。

距離が伸びるだけではなかった。

今度は、速さまで求められるようになったのである。

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