トライアスロンへの道 第15話 自己流の改善策

トライアスロンへの道

海で泳ぐ練習を始めて、すぐに分かった。

海は、思っていた以上に難しい。

一番怖いのは、足が着かないことだった。

プールなら、どうしても苦しくなれば立てる。

壁もある。

底も見える。

ところが海では、どこまで行っても足が着かない。

泳ぎが苦しくなったときの心理的な安心感が、まったく違う。

そして、波。

波があるだけで、習ったばかりの息継ぎが思うようにできない。

プールなら左右交互に呼吸できていたのに、海では片側だけ。

2回クロールして1回息継ぎ。

それが私の基本パターンになっていた。

それでも、ウェットスーツの浮力はありがたかった。

塩分の影響もあるのだろうが、何より身体が沈まない。

泳ぎが下手な私は、プールでは身体を浮かせることにも余計な力を使っていた。

ウェットスーツを着ると、その必要がない。

だから、海で泳ぐこと自体は、思っていたほど苦しくなかった。

問題は別のところにあった。

まっすぐ進めない。

海には、プールのようなラインがない。

目印がなければ、自分がどちらへ進んでいるのか分からない。

実際、かなり左右にクネクネしながら泳いでいた。

たぶん、本人はまっすぐ泳いでいるつもりなのだが、上から見たら相当な蛇行だったと思う。

当然、余計な距離を泳ぐことになる。

そこで必要になるのが、時々前を見ることだった。

泳ぎながら顔を前に上げ、目標物を確認する。

そして、その方向へ泳ぐ。

言葉にすれば簡単である。

ところが、これができない。

クロールをしながら前を見る。

身体を起こす。

顔を上げる。

すると泳ぎのリズムが崩れる。

息も苦しくなる。

方向を確認しようとしただけなのに、今度は泳ぐことそのものが怪しくなる。

「これ、難しいな……」

そこで私は、仲間との合同練習だけではなく、一人でも早朝に海で泳ぐようになった。

海で泳ぐことに、とにかく慣れるしかないと思ったからだ。

スピードが遅いことは、最初から分かっている。

だったら、せめて無駄に曲がらず、できるだけ真っすぐ泳ぐ。

それが自分にできることだった。

呼吸も、少しずつ改善しようとした。

2回に1回、片側だけで息継ぎをしている。

その途中で、前を見る動作を入れてみる。

ところが、何度やっても上手くいかない。

前を見ようとすると、泳ぎが崩れる。

何度やっても、できない。

だったら、どうするか。

考えた末に、私は一つの結論にたどり着いた。

「ある程度泳いだら、犬かきで方向を確認すればいい」

クロールのまま前を見るのが無理なら、一度犬かきになればいい。

犬かきなら、顔を上げられる。

方向も確認できる。

そして、またクロールに戻る。

今考えると、かなり原始的な方法である。

しかし当時の私にとっては、それが現実的な解決策だった。

泳ぐのは遅い。

息継ぎも上手くない。

まっすぐ泳ぐこともできない。

それでも、2000メートルを泳ぎ切らなければならない。

ならば、犬かきでも何でもいい。

とにかく前へ進めばいい。

海でのスイム練習は、そんなところから始まった。

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