トライアスロンへの道 第17話 3種目の忙しさ

トライアスロンへの道

ロードバイクには、少しずつ慣れてきた。

最初は30~40km走るだけでも大変だった。

それが、いつの間にか100kmを超えるようになり、160km、180kmという距離まで走るようになった。

本番のバイクは約200km。

だからなのか、長い距離を走ることには、それほど違和感がなくなってきた。

もちろん、楽ではない。

長時間走れば疲れる。

お尻も痛くなる。

そして、帰ってくる頃にはかなり消耗している。

それでも、ゆっくり走るロングライドなら、なんとかついていけるようになってきた。

ところが、練習はそれで終わらなかった。

海でのスイム練習をしたあと、そのままバイクの練習に向かう。

そして今度は、山へ行く。

坂を登る。

また登る。

下ったと思ったら、また登る。

以前なら、坂が出てくるたびに「勘弁してくれ」と思っていた。

それでも何度も走っているうちに、少しずつ慣れてきた。

そして、ある頃から練習の雰囲気が変わってきた。

今までは、どちらかというと「長く走る」ことが中心だった。

それが今度は、

「もっと速く」

になってきた。

平均速度25km/h。

さらに30km/h近く。

私にとっては、もう十分に速い。

ロードバイクで30km/hというのは、普通の自転車しか乗ったことのなかった私からすると、かなりのスピードである。

それを、しばらく維持して走る。

当然、楽ではない。

むしろ、かなり苦しい。

息が上がる。

脚もきつい。

それでも前の人についていかなければならない。

遅れれば離される。

必死でペダルを回す。

すると、今度は吐きそうになる。

長距離を走っても吐きそうになる。

速く走っても吐きそうになる。

「バイクって、こんなに苦しいものなのか?」

そう思いながら走っていた。

しかも、練習が終わったら終わったで、何もする気にならない。

家に帰る。

食べる。

風呂に入る。

そして、泥のように眠る。

翌日になれば、また仕事である。

それでも、練習は続いた。

なぜそこまでやる必要があるのか。

当時の私は、よく分かっていなかった。

そもそも、200kmのバイクを走ったあとに42km走る競技なのだから、どんな練習をすればいいのかなんて、初挑戦の私に分かるはずもない。

だから、先輩たちについていった。

「今日はここまで」

と言われれば、そこまで走る。

「今日は速く走るぞ」

と言われれば、必死についていく。

そんなことを繰り返しているうちに、練習量だけはどんどん増えていった。

そして、その頃にはもう一つ大きな変化が起きていた。

スイムの練習が増えている。

バイクの練習も増えている。

その一方で、ランニングの時間がどんどん減っていた。

マラソンを走る私にとって、一番得意なのはランニングのはずだった。

ところが本番が近づくにつれて、私はその得意種目を、ほとんど練習していなかった。

泳げなかったから、泳がなければならない。

バイクにも乗れなかったから、乗らなければならない。

そして、気がつけば――

マラソンランナーなのに、走っていない。

なんとも不思議な練習になっていた。

コメント