ロードバイクには、少しずつ慣れてきた。
最初は30~40km走るだけでも大変だった。
それが、いつの間にか100kmを超えるようになり、160km、180kmという距離まで走るようになった。
本番のバイクは約200km。
だからなのか、長い距離を走ることには、それほど違和感がなくなってきた。
もちろん、楽ではない。
長時間走れば疲れる。
お尻も痛くなる。
そして、帰ってくる頃にはかなり消耗している。
それでも、ゆっくり走るロングライドなら、なんとかついていけるようになってきた。
ところが、練習はそれで終わらなかった。
海でのスイム練習をしたあと、そのままバイクの練習に向かう。
そして今度は、山へ行く。
坂を登る。
また登る。
下ったと思ったら、また登る。
以前なら、坂が出てくるたびに「勘弁してくれ」と思っていた。
それでも何度も走っているうちに、少しずつ慣れてきた。
そして、ある頃から練習の雰囲気が変わってきた。
今までは、どちらかというと「長く走る」ことが中心だった。
それが今度は、
「もっと速く」
になってきた。
平均速度25km/h。
さらに30km/h近く。
私にとっては、もう十分に速い。
ロードバイクで30km/hというのは、普通の自転車しか乗ったことのなかった私からすると、かなりのスピードである。
それを、しばらく維持して走る。
当然、楽ではない。
むしろ、かなり苦しい。
息が上がる。
脚もきつい。
それでも前の人についていかなければならない。
遅れれば離される。
必死でペダルを回す。
すると、今度は吐きそうになる。
長距離を走っても吐きそうになる。
速く走っても吐きそうになる。
「バイクって、こんなに苦しいものなのか?」
そう思いながら走っていた。
しかも、練習が終わったら終わったで、何もする気にならない。
家に帰る。
食べる。
風呂に入る。
そして、泥のように眠る。
翌日になれば、また仕事である。
それでも、練習は続いた。
なぜそこまでやる必要があるのか。
当時の私は、よく分かっていなかった。
そもそも、200kmのバイクを走ったあとに42km走る競技なのだから、どんな練習をすればいいのかなんて、初挑戦の私に分かるはずもない。
だから、先輩たちについていった。
「今日はここまで」
と言われれば、そこまで走る。
「今日は速く走るぞ」
と言われれば、必死についていく。
そんなことを繰り返しているうちに、練習量だけはどんどん増えていった。
そして、その頃にはもう一つ大きな変化が起きていた。
スイムの練習が増えている。
バイクの練習も増えている。
その一方で、ランニングの時間がどんどん減っていた。
マラソンを走る私にとって、一番得意なのはランニングのはずだった。
ところが本番が近づくにつれて、私はその得意種目を、ほとんど練習していなかった。
泳げなかったから、泳がなければならない。
バイクにも乗れなかったから、乗らなければならない。
そして、気がつけば――
マラソンランナーなのに、走っていない。
なんとも不思議な練習になっていた。
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